南樺太に関するボルトン極秘文書


1945年1月15日アメリカ国務省
1972年6月20日公表

主題.日本領樺太南部の将来の処理の問題

基本的要因

 問題は、ソビエトがおそらく領域を再び併合する要求を提出することによって生ずる。
日本領樺太のソビエトへの移譲を有利にする要因は、
 1.ソビエトが対日戦争に参加し、日本領樺太を占領することによって、この領域の獲得
の要求を力説するに強力な地位を占めるようになる蓋然性。
 2.シベリア沿海州との関係における、日本領樺太の戦略的位置。
 3.日本の獲得が最近である事実などである。
他面また、日本領樺太の住人たちの完全なる日本的性格、日本本土との密接な経済的統合、
及び日本が武装解除された場合には、その戦略的価値が疑問である点は、日本による保有の
論理的根拠になると思われるが、政治的要因が、かかる解決を不可能とするだろう。
 サハリンに対する主権は、長い間ロシアと日本との摩擦の要因の一つになっていた。
 日本は1875年千島列島に対する全面的権利と交換に、サハリンに対する一切の要求を
放棄したが、1905年ポーツマス条約によって日本は、日本領樺太として知られる北緯
50度線以南のサハリンの一部を承認された。
 同条約はまたロシア及び日本の双方とも宗谷海峡の自由な行動を妨げるような、いかなる
軍事的措置もとらないことを約する旨を規定している。
この時以来日本は、日本領樺太の植民地化及び開発に努力してきた。
 1942年11月以後、日本領樺太を植民地として扱われることを廃められ内務省の管轄下
におかれた。

 最近に至ってはサハリンにおける日本の権益は、島の南部のみには止まっていなかった。
1920年には、日本はロシア領サハリンを占領し、1925年まで保有していた。
 1925年1月20日、北京で調印された日ソ友好経済協定によって日本はソビエト領
サハリンから撤退することを同意し、其の代償としてソビエトをしてポーツマス条約の有効性
と、該地域の石油石炭の制限付き採掘権を認めさせた。
 元々、ポーツマス条約の付属書の中で規定されていた日本の漁業権は1928年の日ソ漁業
協定で明確に定義された。しかしながら1944年3月30日、日ソ両国のは協定に調印し、
それによって北サハリンにおける日本の採掘権の行使は停止され、漁業権は制限された。

 日本領樺太の人口は1940年総人口41万5000人で、それはほとんど日本人のみで
しめられている(99.4%)。この総数は相当大きなものであるが、日本本土の人口の1%以下
にしか当たらない。日本領樺太の面積は14000平方マイルであり、本土の9%に相当する。

 日本領樺太は経済的に密接に日本と統合され、実際上、その貿易の全部が本土とのものである。
1937年、石炭及びパルプの生産は、日本生産のそれぞれ7%と16%にのぼり、木材の産出
は日本本土のそれの14%に達した。日本領樺太の可耕地の10%が耕作されているが、残余
部分が開拓されれば、ほとんど50万人近い増加人口を支ええるだろう。
 
 ソビエトの将来の安全保障の見地から見て、日本領樺太は戦略的に重要である。
 日本領樺太はサンフランシスコからダッチハーバー、ペテロパヴロフスク、ウラジオストック
を経て、上海及びシンガポールに至る最短航空路に交差して横たわっている。
 北東から日本海、ソビエトの沿海州、ウラジオストックに至る交通路を扼している。
 1943年12月1日カイロ宣言は日本領樺太について、何ら特別な言及をしていない。
けれども日本が暴力と貪欲によって取得した、他あらゆる
領域から放逐されるだろうと述べている。
 日本領樺太が暴力と貪欲によって取得された領域と考えられるならば、そのような解釈は
日本に南部サハリンを与えた1905年のポーツマス条約の規定が廃棄されるということになる。

 日本が日本領樺太から放逐されれば、現在同地に住んでいる50万の日本人住民は引き揚げねば
ならず、それは日本本土の人口圧力を増加するであろう。
 彼らが同地に残留する場合は、将来民族統一運動の真の脅威を醸成するであろう。
 しかしながら日本領樺太の一切の軍事施設を取り壊し、将来も非軍事化すれば、たとえ
日本領の一部として留めておいても、安全保障への重大な脅威とはなろうとは思わない。
  加えるに、日本領樺太は、量は限られているが、平和時の経済に必要な重要な生産物を
日本に供給することができるし、おそらくは追加50万人までの日本人移民に、将来の住居を
提供するであろう。
 しかしながら、ソビエトは日本領樺太に対する要求を強く主張するであろう。
  ソビエトは無論曲解釈であるが、ポーツマス条約の廃棄は自動的に南サハリンをソビエトに
帰属させると主張するかもしれない。

それにまた、この領域は1905年以前はロシア帝国の一部だったので、これをソビエトに
移譲するのは、通例の征服とか併合とかの範囲には必ずしもはいらない。
 こういった事情の下では非併合の一般原則を適応することも、また侵略によって取得された
領土返還の原則を適応することも無理が生ずる。
 これらの状況を考え合わせると、南部サハリンを信託地域に指定し、計画されている国際機構の
権威の下におき、その管理国としてソビエトを指定するのが得策ではないか、検討してみるべきで
ある。このような線に沿う措置には次の利点がある。
 すなわち、
1.領土を併合しない原則に合致する。
2.日本の手に残されれば北太平洋の安全保障に危険であるかも知れない地域に、ソビエトの支配権
を与える。
3.当該領土の住民にすべての信託地域が享受すると同様な経済的、社会的利益が確保される。
4.日本領樺太を完全にソビエトに譲渡するよりも、日本にとって、おそらくは首肯し易い。
 一方また、この代案には次のような不利な点もある。
1.ソビエトは完全な併合を邪魔されたと疑うであろう。
2.日本はこの領域を喪失することを恨み、また平和的経済にとって真に価値ある地域を奪われた
ことになる。

3.ほとんど50万に達する日本人住民大部分は、日本領樺太のソビエトによる管理に反感を持ち、
多くのものは本国に引き揚げようとするだろう。

勧告案

1.ソビエトが、
 A.対日戦争の介入の先行条件として、あるいは

 B.対日戦に参加したソビエトの軍事的寄与の報償として、樺太の返還を要求すれば、アメリカ
は平和会議において樺太を信託地域に指定し、これを計画されている国際機構の権威の下におき、
この機構がソビエトを管理国として、指名する提案を支持する約束をして、ソビエトを満足させる
よう努力する。


2.ソビエトが1の条項で述べた状況において、1の条項中で提案された措置に満足しない場合、
あるいはソビエトが対日戦に参加せず、または参戦の誓約を与えずして、樺太の返還を要求した
場合、アメリカの立場は、そのとき存在する諸状況に基づいて定めるべきである。

3.ソビエトが対日戦に介入すると、介入しないとを問わず、日本領樺太の返還の要求を力説しない
場合は、全日本帝国に適用される、武装解除の原則と、次の規定に従う条件で、日本が保有すべき
である。


  A.連合諸国は民間航空の便宜を供与される。
  B.宗谷海峡は常時、引き続いて国際船舶のために解放されるべきである。





>日本はこの領域を喪失することを恨み
少なくとも市長は恨んでおります。(`´)